リスニングにおいて多くの人が「スピードが速くてついていけない」と感じる傾向にあります。とは言え、これは実際に発話者の発声が速いというよりも、「理解が追いつかないうちにどんどん先に進んでしまう」という感覚を「速い」と知覚していることも多いものです。そのため、「速い」と感じる場合でも、実質的にリスニングの課題となっているのは発音理解であったり語彙・文法理解であったりするということも珍しくありません。
ただここでは、発音理解はある程度できていて、かつ基本的な文法や語彙は習得している(その発声内容を英文に書き下したものを読めば理解できる)という前提で、純粋に速さが理解の阻害に繋がっている場合の対策について考えてみましょう。
リスニングにおける理解の速度を上げることには、実は自分自身のリーディングの速度やスピーキングの速度が大きく関わっています。なぜなら、普段自分が文字を読んで理解できる速さよりも速く話されたら、当然理解も追いつくのが難しくなってしまうからです。また、自分よりも早口な人と会話をすると話をするのが難しいということが日本語でもあるかと思いますが、英語でも同じことが言えます。自分で発音できるよりも速い音を聞き取るのは、困難なことなのです。
では、リーディングの速度を上げるにはどうすれば良いのでしょうか。そのためには、矛盾しているようですが、”ゆっくり読む”ことです。リーディングの速度を上げるために「速く読もう」としたり、速読をしようとしたりしてしまう人もいますが、”速読”とは、「ゆっくり読めば理解できるものを速く読めるようにすること」です。つまり、ゆっくり読んでも理解できないものを速読することはできません。したがって、まずは「ゆっくり読めば理解できる」という能力を養う必要があり、そのためには精読が必要になるのです。精読をするときには、一文一文丁寧に、どれだけ時間が掛かっても良いので、日本語に丁寧に訳しながら読んでいきましょう。
一方スピーキングの速度を上げるには、正しい発音を理解した上で文章を音読したり、何らかのスクリプトをお手本となるスピードで読み上げてくれる音声があればそれと同じ速度で文章を音読したり(パラレルリーディングと呼ばれる手法です)、お手本となるリスニング素材を聞きながら、聞こえてきた音をそのまま発声するイメージで少し遅れて発声したりする手法(シャドーイング)があります。
以上のような手法によって、発音・速度を両立させて正しく文章を聞けているかどうかをチェックしたいときには、リスニングの音声を用意し、その音声を聞きながら、何と言っているかを逐一書き下してチェックしてみると良いでしょう(ディクテーションという手法です)。書き下した文章と実際のリスニング音声の英文が一致していれば、正しく聞き取れていることが証明されます。