ライティングにおいて最も難しいのは、『文章をまとめてひとつの書き物をすること』です。例えば自分で小説を書いてみたい、エッセイを書いてみたい、あるいは記事を寄稿したい、論文を書きたいなどがこれに当てはまります。文単位や文章単位でのライティングにおいてはある程度理論的に対策を練ることもできるのですが、こういった『まとまった文章を書きたい』ということになると、誰にでも当てはまるような指導は難しくなります。
ただ、まとまった文章を書くときに大切なこととして、まず『そのジャンルの文章の形式を考える』という工程があります。例えば論文を書くときには『最初に概要を書く』であったり、物語を書くときには『まずキャラクターの紹介となるシーン、それから物語全体が動き出すシーンを書き、何らかの出来事を多くの場合は感動的あるいは意外な形で解決して、最後にエンディング』であったりなど、そのジャンルにはある程度の形式が存在するものです。こうした形式が必ず守られているわけではありませんが、大抵の場合はこうした形式を守ることがそのジャンルにおけるライティングの手掛かりになります。
こうした形式を学ぶには、そのジャンルの文章に触れることが大切です。例えば自分でビジネスに関するノウハウの本を書きたいと思ったなら、ビジネスに関するノウハウの本を何冊か読んでみる必要があるでしょう。そうしていわゆる『ビジネス書』の全体の形式を学んだ後に、それを踏まえた上で文章を書いていくわけです。
それ以外に重要なポイントとしては、同じ言葉や表現を何度も使いすぎないようにするという点もあります。強調するためや語句を統一するためといった理由で同じ表現が何度も使われることはありますが、そういった特定の単語でないなら、いくつかの言い回しを覚えておいた方が良いでしょう。その上でそうした類義語や似たような言い回しについて、厳密にはどういった違いがあるかも一緒に覚えておくと後学に役立ちます。
このような話をすると、『自分なりの文体を大切にしたい』という反論がある場合もあります。もちろん、特定の文体に価値があることもあります。しかし多くの場合、その自分なりの文体が他の人にとって理解しにくいものであるなら、分かりやすい文体や読みやすい文体で書く方が良いでしょう。文章は他人に読んでもらい、理解してもらうことが大切であるからです(もちろん、自己満足で文章を書いている場合や、自分のための記録というような場合にはこの限りではありません)。自分なりの文体は、基本となる型を身につけてからそれを崩すことで手に入れるものであり、多くの人にとってはゼロから作り上げていくようなものではありません。ゼロから自分なりの文体を作り上げてそれが評価される人もいますが、それは才能あってのことであって、誰でもそれが可能ということではないのです。